【レビュー】『Warhammer 40,000 RolePlay Death Watch』プレイビュー


田島淳

『Warhammer 40,000 RolePlay Death Watch』をプレイする機会に恵まれた。

先頃発売されたプレイステーション3、XBOX360用ゲームソフト『ウォーハンマー40,000:スペースマリーン』【CEROレーティング「Z」】をご存知だろうか。

知らない方はこちらをご覧いただきたい。

ウォーハンマー40,000:スペースマリーン 【CEROレーティング「Z」】 / サイバーフロントウォーハンマー40,000:スペースマリーン 【CEROレーティング「Z」】 / サイバーフロント

http://www.cyberfront.co.jp/title/spacemarine/

いかがだろうか?

遠い未来を感じさせるSF世界。

お馴染みのパワードアーマーらしきものに身を包んでいるのにも関わらず、何故か頭部むき出しの厳つい大男がチェーンソーの刀身を持つ剣で緑色の肌をした亜人間の胴体を真っ二つに切り裂いている。

彼らこそがスペースマリーンだ。

観る者に強烈な印象を残すこの最新アクションゲームはその由来をミニチュアバトルゲームに持っている。

「暗黒の遠未来に唯一残ったもの、それは戦争」

日本でも展開されているミニチュアバトルゲーム『ウォーハンマー40,000』は人類が滅亡の危機に瀕する第41千年紀という遠未来が舞台である。

〈暗黒の千年紀(ダークミレニアム)〉と呼ばれるこの世界の様相は、およそ1万年経った今も人々の記憶に強く焼き付けらている忌わしき出来事に端を発してる。

1万年前、神々の御意志によって人類の長たるべく選ばれた不死なる皇帝は、その強大無尽蔵ともいえる軍事力を率いて銀河全域を平定するべく〈大征戦〉を展開していた。スペースマリーンはその主力である。彼ら〈戦闘者〉は遺伝子操作を施された身の丈3mを超える巨人であり、肉体の頑健さ、および強靭さは常人に倍する文字通りの超人だ。また出身戦団によって様々な異能、超能力を有する。

スペースマリーンの最前線における獅子奮迅の活躍によって聖なるテラ(地球)を中心とした人類の〈帝国(インペリウム)〉による銀河統一は時間の問題かと思われた。しかし総主教の中でも、ひときわ皇帝の信頼厚き大元帥ホルスが混沌の〈禍つ神々〉に魂を売り渡す事をためらわず、ましてや皇帝その人に反旗を翻そうとは誰が想像し得ただろうか。

〈ホルスの大逆〉と呼ばれるこの卑劣な裏切り行為により〈帝国〉は真っ二つに引き裂かれ、また皇帝自身もホルスを討ち取る際に瀕死の重傷を負った。 〈大征戦〉は頓挫し、人類は衰退を余儀なくされたのである。オルク、エルダー、ネクロン、ティラニッド、タウ・エンパイア、そしてケイオスの軍勢。人類に敵対する勢力はその力を取り戻し、また新たなる脅威も現れ、銀河は有史以来最も血生臭い時代に突入している。

数々の外敵に〈帝国〉もただ手をこまねいている訳ではない。超人的な力を有するスペースマリーンを中心として敢然とこれらの勢力に立ち向かっている。だが皇帝の威光は翳りつつあり、肥大化し、手の行き届かない〈帝国〉の諸惑星は次々と敵の手に落ちている。人類の劣勢は否定し難く、永遠の闇はそこまで迫っているのだ。

さてミニチュアバトルゲームではこの諸勢力の軍勢を構築しプレイをする。

戦場を再現したディオラマに、同じ特色を持ったミニチュアが多数並べられアーミーを形成し、また違う特色を持つアーミーとぶつかり合う様は壮大で興奮する。正に多数のキャラクターを一度に扱うミニチュアゲームでしか味わえない楽しさがある。

だが、このミニチュアのキャラクター1人1人に目を向けて見ることはできないのだろうか。

この丁寧に塗り分けられた精緻なつくりのスペースマリーンは、どこで生まれ、どんな経歴を持ち、この過酷な世界で何を考えて生きているのだろう。そもそもなんていう名前なのだ?

これらの疑問を解き明かし、今までに経験した事のない楽しさを提供してくれるゲームがある。

それが『Warhammer 40,000 RolePlay』だ。

『Warhammer 40,000 RolePlay』(以下『WH40KRPG』)はミニチュアバトルゲーム『ウォーハンマー40,000』と背景世界を同じくする会話型RPGである。

現在、プレイスタイルと密接な関係にあるキャリアごとに4つのコアルールが発売されている。

異端を葬る為なら惑星ごと焼き払う「究極浄化」も躊躇わない異端審問庁の異端審問官『Dark Heresy』
Dark Heresy Core Rulebook (Warhammer 40,000 Roleplay) [ハードカバー] / Owen Barnes, Kate Flack, Mike Mason (著); Fantasy Flight Pub Inc (刊)

危険な銀河を所狭しと飛び回る宇宙商人『Rouge Trader』
Rogue Trader Core Rulebook (Warhammer 40,000 Roleplay) [ハードカバー] / Fantasy Flight Games (Corporate Author); Fantasy Flight Pub Inc (刊)

大逆人ホルスの如く混沌に魂を売った「裏切り者」ケイオススペースマリーン『Black Crusade』
Black Crusade: Roleplaying in the Grim Darkness of the 41st Millenium (Warhammer 40,000 Roleplay) [ハードカバー] / Sam Stewart (著); Jay Little, Mack Martin, Ross Watson (寄稿); Fantasy Flight Pub Inc (刊)

これらは背景世界と元になるゲームシステムを共通とするが、単体でプレイ可能で各々にサプリメントが発売されるなど、それぞれが独自の展開を見せており、別のゲームと言っても良いほどである。

そして『Death Watch』はその第3弾に当たる。取り上げられているのはそう、スペースマリーンだ。
Deathwatch: Core Rulebook (Warhammer 40,000) [ハードカバー] / Owen Barnes, Alan Bligh, John French, Andrea Gausman (著); Ross Watson (イラスト); Fantasy Flight Pub Inc (刊)

タイトルであるデスウォッチとはスペースマリーンの各戦団から選抜された数百万人に1人のエリートである。スペースマリーンの中でもひときわ能力の高い者だけがデスウォッチに選ばれる。

彼らはダークエンジェルやスペースウルフなどのそれぞれの出身戦団によって守らなければならない流儀と有する異能が特徴づけられている。例えばダークエンジェルなら過去の汚点から部外者を信用せず、それが習性となるまで定期的に戦団への従順さを試される。その代わり戦闘では踏み止まって戦い続ける並外れた体力を手に入れる。全てが凍てつく惑星フェンリスで生き延びてきたスペースウルフなら獲物を逃さない知覚力は誰もが有するが、名誉を必要以上に重んじる態度はしばしば厄介事を引き起こす。

それらの特別な力はただただ聖なるテラの〈黄金の玉座〉にましまし続ける皇帝とその聖領である〈帝国〉のためだけに費やされる。

彼らは皆、皇帝への篤い信仰を胸に抱く信徒であり、お互いを同胞(ブラザー)と呼び合う。

また驚くべきことにデスウォッチは他のキャリアと違い戦場を選べる。

巨大な官僚機構の頂点に位置する至高卿による最高評議会が皇帝の御名において下した決定は絶対であり、各宙域の司令官、次に星域長、そして星区長、さらに惑星総督にまで伝達されて皇帝の御意志、各キャリアへの任務はようやく実行される。しかしデスウォッチはある程度の自由を持って人類の守護という聖務を果たす。

人類と外敵との戦いは正に最終局面を迎えようとしており戦場には事欠かない。そして戦場は例外なく厳しく、人類は敗北寸前の局面だ。その絶望的な状況を覆すためにデスウォッチ数名から編成されるキルチームは投入される。

危機に瀕した惑星へその能力を高める為に両目を潰した超能力者サイカーの案内だけを頼りに宇宙船で急行し、外を伺うことできない降下用ポッドでここぞと当たりをつけた地表の一箇所へ射出される。

ポッドから何事もなく出てくるキルチームはまさしく一般人を凌駕した〈戦闘者〉であり、人類の命運を双肩に掛けた救世主である。

〈皇帝〉から下賜されたパワーアーマーやチェインソードなどの聖具で身を固めたマリーンの姿を見て、帝国市民は頭を垂れ、膝を折り「我が君」と熱のこもった囁きを漏らすのだ。

そしてデスウォッチは圧倒的多数のエイリアンの群れに信仰心を武器にして戦いを挑み、勝利を皇帝に捧げるのである。

引き延ばされた数百年の寿命の中でデスウォッチはその強固な信仰のもとにこの様な戦いを繰り返している。

ここでゲームシステムに目を向けてみよう。

『WH40KRPG』は『ウォーハンマーRPG』(以下『WHFRP』)2版の正統な後継と言える。能力値や技能、異能などキャラクターを表す要素はほぼ変わらない。

ここで軽く『WHFRP』について触れておこう。

『WHFRP』は現在3版までが発表されており、日本でもかつて初版が社会思想社から発売され、2版もホビージャパンから展開されている三十年戦争時代のドイツをモチーフとしたファンタジーRPGである。

数あるファンタジーRPGの中でも『ウォーハンマーRPG』はプレイヤーキャラクターが開始時点において一般人と何も変わりなく、むしろそれが特色の1つと言っていいゲームだが、そのスペックは当然ながら一般人のそれだ。そのため鎖帷子を着込み剣と盾を構えた兵士でも、農具を構えた死にもの狂いで襲いかかる3人の農夫に屈服させられてしまう事が起こりえる。

『WH40KRPG』においてもシリーズ第1弾である『Dark Heresy』では事情はあまり変わらず、作りたてのプレイヤーキャラクターである異端審問官見習いの能力は『WHFRP』でせいぜい数回の冒険を経て成長させたキャラクターに等しい。

だが『Death Watch』は違う。

その違いは格闘技やスポーツにおける階級に近い。『WHFRP』や『Dark Heresy』などのプレイヤーキャラクターが軽量級なら『Death Watch』は超重量級だ。横たわる肉体の格差。経験では越えられない壁。それが『Death Watch』の特徴である。

数値を『WHFRP』と比べてみると『Death Watch』のキャラクターは肉体の筋力と頑健さを表す能力値による効果がドーピングにより2倍強あり、また彼らにしか扱えない武器も同様に倍の威力がある。

デスウォッチの右腕にはめた1mにも及ぶ巨大な拳、聖具パワーフィストが『WHFRP』のキャラクターに当たると、彼は2d10に10前後の筋力ボーナスを加えたダメージを被るのだ。

デスウォッチの肉体の強靱さが倍なのは比喩でも何でもなく文字通りの意味なのである。

もちろん敵もその分強力になり、今までのシリーズ作品からはお目にかかることができない数字が戦闘では飛び交う。

先行作品のプレイ経験がある者はまず唖然とし、次にこの新しい光景がもたらす快楽に自然と笑みを漏らすだろう。

さらにデスウォッチの超人性を際立たせるルールとして「群れ(Horde)」が設定されている。

これは群衆などの大勢を1体のキャラクターとして見做すルールで、例えば100体のミュータントの群れを1つのデータで管理する。そうする事によりその100体のミュータントをデスウォッチ1人で相手どる事がゲームで描写できる。彼は重火器の連射でそいつらを蹴散らすのだ。一定のダメージを与える毎に群れは士気が保てるか試され、その判定に失敗すると敢えなく崩壊して敗走する。

『WHFRP』では兵士が農夫に屈服させられてしまう事があると述べたが、『Death Watch』では圧政に耐え切れず悲壮な決意で蜂起した民衆の意志を1人の掃射で挫くことも容易だ。

以上のことから『Death Watch』は他の『WH40KRPG』と元のシステムを同じにするにも関わらず、扱う数値を上方にシフトするというシンプルなアイデアに超人であり一般人からみたら半神にも等しいデスウォッチという設定を乗せて既存作品との差別化を図っている。それにより全く別のゲームをプレイしている印象を与えることに成功している。システムと設定の見事な融合と言えるだろう。

ここまでゲームの面から『ウォーハンマー40,000』を眺めて来たが、重厚な背景世界を味わい尽くす為に忘れてはならないものがある。実力派作家のスピンオフ小説だ。

残念ながら1冊も翻訳は出ていないが、『禅銃』のバリントン・J・ベイリーによる長編『Eye of Terror』、『黒き流れ』三部作や『エンベディング』のイアン・ワトスンによるその名も『Warhammer 40,000 Space Marine』、『WHFRP』2版の巻頭小説『人生は、死を越えてなお』を手掛けたダン・アブネットによる『Gaunt’s Ghosts』シリーズなど数々の小説が発表されている。英語に堪能な方はこちらに触れてみるのもいいかもしれない。
Eye of Terror (A Warhammer 40, 000 novel) [ペーパーバック] / Barrington J. Bayley (著); The Black Library (刊)
また、まずは手軽にゲームを初めてみたいという方には簡易ルールとシナリオがセットになった体験版がこちらからダウンロードできる。
http://www.fantasyflightgames.com/edge_minisite_sec.asp?eidm=108&esem=4

『WH40KRPG』の世界は勢いを増して、留まることを知らない。思い切ってこの流れに飛び込んでみてはいかがだろうか。

皇帝陛下の御慈悲。そは許しにあらず、忘却にあらず。ただ受け入れることにあり、だ。