アナログゲーマーのための「SFマガジン」ガイド(2011年3月号):SFの最前線を知ろう!



アナログゲーマーのための「SFマガジン」ガイド(2011年3月号):SFの最前線を知ろう!
 岡和田晃


 Analog Game Studiesをご覧の方の多くは「SFマガジン」(正式表記は「S-Fマガジン」)という雑誌をご存知かと思います。1960年の創刊から50年以上も継続している、日本唯一の月刊SF専門誌です。

 そして今月号(2011年3月号)のSFマガジンは、Analog Game Studiesの読者の方に、ぜひともチェックしていただきたい内容となっておりますので、簡単にご紹介をさせていただきます。

S-Fマガジン 2011年 03月号 [雑誌] [雑誌] / 早川書房 (刊)
 まず、目玉は2010年度英米SF受賞作特集。

 (とりわけ)海外のRPGやボードゲームの世界観やルールシステムは英語圏のSF小説に影響を受けていることが多いのですが、その最前線を日本語で追いかけることができる内容となっています。

 詳しくはP.54の橋本輝幸氏による「2010年度・英米SF受賞作特集」、「2010年度受賞作リスト」ならびに特集解説に詳しいので、こちらでは屋上屋を架すような真似は避けますが、Analog Game Studiesでも取り上げたチャイナ・ミエヴィルをはじめ、SF(ファンタジー)界の動向がわかりやすくまとめられています。 P.269の加藤逸人氏による「英米SF注目カレンダー2009」と併せて読めば、英語圏でのSFの流れを大まかに把握することができるでしょう。山岸真氏らによる、(SF界を代表する賞)「ヒューゴー/ネビュラ賞歴代受賞作リスト」は1997年に掲載されたものから更新が加えられているようです。

 今月号に収録された小説作品の中では、海外SFファンに衝撃を与えたキジ・ジョンスンの短編小説「孤船」がなんといってもおすすめです。

 アナログゲーマー(そしてSFファン)が往々にして目を背けるか無自覚に反芻してしまう、あるデリケートな――しかし極めて重要な――問題について再考を促す衝撃的な作品となっています。わずかに内容に触れただけでも興趣(という言葉もこの作品には似合いませんが)を削ぐ可能性がありますので、詳しく紹介はしませんが、この短編のためにだけでも、今月号のSFマガジンを買う価値はあります。

 ほか、ピーター・ワッツの「島」、そしてカレン・ジョイ・ファウラーの「ペリカン・バー」は、アナログゲームでも主題とされることが多い閉鎖的な空間の取扱い方/世界観の解釈について、示唆的な内容となっています。こちらも、より踏み込んだ内容紹介についてはP.54の橋本輝幸氏の解説をご覧下さい。

 続いて、P.266からの「SF SCANNER 特別版」では、石亀渉氏によるパオロ・バチガルピ(Paolo Bacigalupi)の「ねじまき少女」(The Windup Girl)の解説、後藤郁子氏によるチャイナ・ミエヴィル「都市と都市」(The City & the City)、市田泉氏のシェリー・プリースト(Cherie Priest)の「ボーンシェイカー」(Boneshaker)の解説が充実しています。これらはいずれも英語圏では非常に高い評価を受けていながら、邦訳がない長編小説群であり、その筋書きをまとまった形で手堅く押さえられる機会は貴重です。どの作品にも、おそらくサイバーパンク以降の現代SFに通用する共通した問題意識が垣間見え、アナログゲーマーの方にも関心を抱いてもらえる内容になっていると思います。

 連載群では、飛浩隆氏の連載「零號琴」は、光瀬龍の『百億の昼と千億の夜』と壮大さがジャック・ヴァンスの「月の蛾」の色調でずらされるかのような、驚きの読後感がもたらされる作品になっています。

 巽孝之氏監修になる「現代SF作家論」は、金子隆一氏によるアーサー・C・クラーク論。かつてクラークの訃報は多くのアナログゲーマーにも悲嘆をもたらしましたが、クラークとは何者だったのか、そしてハードSFとは何かを問う評論は、全体を貫く因果律の設定が重要なアナログゲームの現場にも何かしらのヒントを与えてくれることでしょう(ある意味、ワッツ「島」ともシンクロする内容かもしれません)。

 「てれぽーと」欄には、蔵原大氏が講師をつとめるSF乱学講座の告知「ウォーゲーム(図上演習)の歴史:クラウゼヴィッツ、H.G.ウェルズからオバマ大統領まで」(2011年2月6日)が掲載されております。より詳しくは、Analog Game Studiesの以下の記事も併せてご覧ください。

http://analoggamestudies.seesaa.net/article/181199132.html

 そしてAnalog Game Studiesの読者の方にとりましては、池澤春菜氏のエッセイ「SFのSは、ステキのS」も見逃せません。

 こちらでは、池澤春菜氏が会話型RPG(TRPG)『迷宮キングダム』(河嶋陶一朗/冒険企画局著、ホビーベース)を遊んだ経験がレポートされています。『迷宮キングダム』とは、世界全体がダンジョンと化してしまった世界(百万迷宮)を舞台に、ダンジョン探険と国家経営シミュレーションが同時に楽しめるユニークなコンセプトの作品です。ランダム・チャートが駆使されたセッション経験が軽快に綴られており、coco氏の楽しいイラストと相俟って、会話型RPGのライブ感が伝わってくるような文章になっています。

 なお池澤春菜氏は「ファンタジー寄りばかりではなく、もっとSFなTRPGはないものか」と、『キャプテン・フューチャー』、『タフの方舟』、『地球の長い午後』など、SF小説の名作群の名前を例として挙げておられますが……。

 実はあるのです、SFをフィーチャーしたRPG。それも、とっておきのものが。

 もったいぶるわけではありませんが、近いうちに、Analog Game Studiesが熱烈に推薦するSF-RPG『Eclipse Phase』を、Analog Game Studiesのウェブログ上で継続的にご紹介することができると思います。ご期待下さい。

・チャイナ・ミエヴィルについては、「RPGゲーマーのための『ペルディード・ストリート・ステーション』ガイド」もよろしく!
http://analoggamestudies.com/?p=184

・キジ・ジョンスン「孤船」のイラストをこちらで見ることができます。
http://quietblue.exblog.jp/14802756

追記:
『エクリプス・フェイズ』についての解説文はこちらで公開されました。
http://analoggamestudies.seesaa.net/article/183475700.html

S-Fマガジン 2011年 03月号 [雑誌] [雑誌] / 早川書房 (刊)