ロバート・J・シュワルブ/アリ・マーメル『サイオニックの書』(滝野原南生/柳田真坂樹他訳、ホビージャパン)でサイオニック・セッションを!


【新作紹介】ロバート・J・シュワルブ/アリ・マーメル『サイオニックの書』(滝野原南生/柳田真坂樹他訳、ホビージャパン)でサイオニック・セッションを!
 岡和田晃


 世界最初のRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(D&D)は現在でも、まったく新しいシステムを搭載した第4版が精力的に日本語展開されています。その色調は『指輪物語』に影響を受けたハイ・ファンタジーを基体としながら、魔法が近代科学のように発展を遂げた世界を扱う(スチーム・パンクならぬ)マジカル・パンクな世界であるエベロンなど、いくつもの新たな試みが加えられています。

 そして今月、D&Dの可能性にまた新たなマイルストーンを加えるサプリメント『サイオニックの書』(滝野原南生/柳田真坂樹他訳、ホビージャパン)が発売となりました。

サイオニックの書 (ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版) [大型本] / ロバート・J・シュワルブ, アリ・マーメル (著); 滝野原南生, 柳田真坂樹, 桂令夫, 塚田与志也 (翻訳); ホビージャパン (刊)

※D&Dについてご存知ない方は、以下のリンク先から、詳しい解説を読むことができます。

『D&D第4版 スターター・セット』プレビュー
http://www.hobbyjapan.co.jp/dd/news/4th_starter/index.html
Webリプレイ:『竜の予言に選ばれし者たち』
http://www.hobbyjapan.co.jp/dd/article/web_replay_eb/index.html

 『サイオニックの書』には、主に『プレイヤーズ・ハンドブックIII』によって導入された、サイオニック(超能力)にまつわる拡張ルールや設定が収録されています(『プレイヤーズ・ハンドブックIII』と併用することを前提として書かれている本です)。

 『プレイヤーズ・ハンドブックIII』によって、さながらシオドア・スタージョンのSF小説『人間以上』や(映画にもなった)アメリカン・コミック『ファンタスティック・フォー』等に登場する異能者たちを思わせる超能力を、あなたのセッションに持ち込むことが可能になるというわけです。

 あるいは、香港映画などに登場するモンク(格闘僧)のトリッキーなアクションをD&D第4版で表現することもできるようになった次第です(D&D第4版では、モンクはサイオニック・クラスとして扱われます)。

 加えて、異星人を思わせる外観をし、ストイックに自らを律する種族ギスゼライ、結晶生命体シャードマインド、心に迷宮を抱える牛頭人身種族ミノタウロス、そして植物人間ワイルデンといったヒューマンやエルフ、ドワーフなどとはひと味違うエキゾチックな種族でD&Dを遊ぶことも可能になりました(これらの種族の多くは、サイオニックに高い適性を有しているのです)。

 『サイオニックの書』の「はじめに」にも書かれていますが、これまでサイオニックについてのルール的/世界観的な位置づけについては、さまざまな試行錯誤が重ねられてきました(その歴史は1976年の「Eldrich Wizardry」にまで遡ります)。日本語環境においては、第3.5版の『サイオクス・ハンドブック』が嚆矢となり、D&Dの世界に超能力がお目見えすることとなりました。

 そして今回発売となった『サイオニックの書』は、基本的な枠組みやデータの提示、拡張に留まらず――超能力についての記述をさらに深める、サイオニクスの歴史にとっていわば記念碑的なサプリメントなのです。

 『プレイヤーズ・ハンドブックIII』に掲載されたサイオニックのルールは斬新なものでした。これまでルール運用にあたって抱いていた固定観念を良い意味で覆されるようなルールの数々は、初めての人には新鮮な喜びを、マンネリ化したプレイグループには嬉しい驚きを与えてくれるでしょう。
 とりわけ、新しい概念「パワー・ポイント」(モンクの場合は、各パワーの移動用法と攻撃用法)を活用していかに戦局を有利にするかという点は、まさにプレイヤーの知恵の見せどころだと思います。D&Dの戦闘はグリッドマップを活用したミニチュアの移動と、ヒット・ポイントの変化や状態異常の付与/剥奪による戦局の流動性に大別される、良い意味で単純明快なものだと言えますが、サイオニックはそこから導きだされる数理的モデルに思いもかけない変化が生まれるようなシステムとなっています。

 あなたの周りに「ファンタジーなんて、どれも同じでしょ」などとうそぶく、すれっからしのゲーマーはいませんか? あるいはD&Dを遊びこむうちに、今までとは切り口の違う斬新なキャラクターを演じてみたいという欲求も生まれてくるはずです。そうした人にはサイオニック・セッションをお薦めしたいと思います。

 例えば『プレイヤーズ・ハンドブック』、『プレイヤーズ・ハンドブックIII』、『サイオニックの書』(DMは『モンスター・マニュアルIII』を使用)というレギュレーション(縛り)で、またひとつ新たなアドベンチャーに挑戦してみるのはいかがでしょう(ちなみに『プレイヤーズ・ハンドブックIII』は、『プレイヤーズ・ハンドブックII』を持っていなくても活用することができるサプリメントです)。きっと、新たな発見があるはずです。

 また(残念ながらいまだ未訳であるものの)D&D第4版にはサイオニックをフィーチャーした「Dark Sun」という背景世界も導入されていることですし、超能力縛りでD&Dを遊んでみると、あなたのファンタジー観はより深みを増すことと思います。何より、D&D第4版のルール・メカニズムの奥深さを垣間見ることができるでしょう。

 DMにとって、『サイオニックの書』や、サイオニック・キャラクターが対峙するモンスターを数多く収めている『モンスター・マニュアルIII』は、フレーバー・テキストも特に充実した内容となっており、奥行きのあるシナリオをデザインする際、大いに役立つことと思います。

 「でも、私はあくまでハイ・ファンタジーが好きなんだ。超能力を入れたら世界観や雰囲気が壊れるだろ?」と心配に思っている方もいるかもしれません。

 ただ、D&D第4版でのサイオニックは、SFやアメリカン・コミック、香港映画などを彷彿とさせるエキゾチックな色合いを残しながらも、自然な形でハイ・ファンタジーとの融合が模索されています。それゆえ、ご心配は杞憂です。

 つまりサイオニックの英雄たちは、“彼方の領域”からやってくる異形と呼ばれる存在(大雑把な言い方をすれば、クトゥルフ神話に登場するクリーチャー群を思わせる存在)と対峙するという、明確な存在意義を与えられているわけです。サイオニックだからといって、武勇や秘術の力を軸にした英雄たちから、浮いてしまうことはないのです。

 とりわけ第5章の「サイオニック系キャラクター用選択肢」は、既存のキャラクターにサイオニックな背景を与えるためのアイデアが豊富に盛り込まれています。

 また本作のメイン・デザイナーのロバート・J・シュワルブは『ウォーハンマーRPG』をはじめとした各種RPGに深く関わっているキャリア豊富な実力派デザイナー/ライターであり、セッションに深みを与えるアイデアの数々と卓越した文章力には目を瞠るものがあります。翻訳も原文の面白さを引き出した愛あるものになっており、とりわけモンクの章は一見の価値があると言えるでしょう。

 さあ『サイオニックの書』を活用し、“彼方の領域”から自然世界を侵食せんと企てる、恐るべき狂気を食い止めましょう!

精神の力を解放せよ!
 この世界と“彼方の領域”の狂気の間に立ちはだかるのは君しかいない!
 心身を律する旧き教えを学んだ君は、自らの意志の力を操る力を身につけた――君の意志は思考と夢の、そして君の精神を外に投影し、他者の精神を支配する魔法として働くのだ。
 心身を合一させてひとつの武器と成し、外界からやってくる狂気の力に立ち向かう君は、すなわちサイオニックの英雄、鋼の意志で築いた砦である。
 本書は『プレイヤーズ・ハンドブックIII』を用いて作成したサイオニックのキャラクターに、今まで見たこともないような選択肢を贈るものである。本書には、アーデント、サイオン、バトルマインド、モンクのクラス用にデザインされた新たなパワー、特技、伝説の道、そして神話の運命が収録されている。
 また、サイオニックの伝統に関する背景情報や、荒々しい様々な才能のためのルール、2種の新たな種族、それに新たな作成オプションやクラス特徴は、君のお気に入りのサイオニック系クラスをプレイするにあたっての新たな選択肢を与えてくれるだろう。

『サイオニックの書』のプレビューはこちらから読めます(D&D日本語版公式サイト):
http://www.hobbyjapan.co.jp/dd/news/4th_psp/index.html

プレイヤーズ・ハンドブックIII (ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版) [大型本] / マイク ミアルズ, ブルース R コーデル, ロバート J シュワルブ (著); 桂 令夫, 岡田 伸, 北島 靖巳, 楯野 恒雪, 塚田 与志也, 柳田 真坂樹 (翻訳); ホビージャパン (刊)サイオニックの書 (ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版) [大型本] / ロバート・J・シュワルブ, アリ・マーメル (著); 滝野原南生, 柳田真坂樹, 桂令夫, 塚田与志也 (翻訳); ホビージャパン (刊)モンスター・マニュアルIII 第4版 (ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版) [大型本] / マイク ミアルズ, グレッグ ブリスランド, ロバート J シュワルブ (著); 桂 令夫, 岡田 伸, 北島 靖巳, 楯野 恒雪, 塚田 与志也, 柳田 真坂樹 (翻訳); ホビージャパン (刊)人間以上 (ハヤカワ文庫 SF 317) [文庫] / シオドア・スタージョン (著); 矢野 徹 (翻訳); 早川書房 (刊)ファンタスティック・フォー[超能力ユニット] (Blu-ray Disc) / ヨアン・グリフィズ, ジェシカ・アルバ, クリス・エヴァンス, マイケル・チクリス (出演); ティム・ストーリー (監督) 投稿日: カテゴリー 新作紹介