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《遊びにひそむ民俗 2》


《遊びにひそむ民俗 2》

●本文:草場純(遊戯史学会・理事)、解説ほか:蔵原大(遊戯史学会・理事)

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《本 文》

「今年の牡丹(ぼたん)」は、前回に挙げた「あぶくたった」よりもっと忘れられた、既に失われたと言ってもそう間違いでない遊びです。ただ失われるのがあまりにも惜しい遊びでもあります。

〔◆ 解説者注:下の『こどものうた140選』(ドレミ楽譜出版社、1992)に「今年のぼたん」が収録: http://www.gakufu.ne.jp/detail/view.php?id=6081 〕

『こどものうた140選』
『こどものうた140選』(1992)

「今年の牡丹(ぼたん)」の全体は、以下の六つに分かれています。

 ●1.コドモ達が輪になって遊ぶ
 ●2.オニが現れて問答をする
 ●3.オニを含めてコドモ達が輪になって遊ぶ
 ●4.オニが「帰る」と言って再び問答になる
 ●5.オニをコドモが囃(はや)す
 ●6.鬼ごっこになる

案外複雑な構造をしているのですが、要するに鬼ごっこであるわけです。しかし民俗と重なるのはその前遊びに当たる部分なのです。

上で書きました「●1」「●3」の輪になって回る部分ですが、「♪今年の牡丹(ぼたん)はよい牡丹(ぼたん)、お耳をからげてスッポンポン、もひとつからげてスッポンポン」で耳をからげるのは、蛇よけ、とも魔よけとも言われます。オニはそれで理由を作って帰るのです。

そもそも鬼ごっこは、民俗学に言う感染呪術の雰囲気があります。オニは、悪霊であり、「穢(ケガレ)」であるわけです。その穢(ケガレ)は、接触によって憑依(ひょうい)感染します。オニに触られたコドモがオニになり、オニは穢(ケガレ)を染(うつ)すことによって、コドモに戻るわけですね。こうした穢(ケガレ)は、観念上のもののはずですが、子ども達の遊びの中でも、民俗のなかでも共同観念として実在化するのです。

〔◆ 解説者注:余談ですが「ケガレ」の意味をくわしく知りたい方には…… ⇒ 宮本要太郎「「ケガレ」の意味に関する比較宗教学的考察」(2008)http://kuir.jm.kansai-u.ac.jp/dspace/handle/10112/1334

実は、「今年の牡丹(ぼたん)」の中では明確に表明はされませんが、オニは蛇の精であるのです。穢(ケガレ)は蛇精として形象化されます。その証拠に姿は人間に見えても、影を見たり、後ろから見たら蛇そのものなのです。

だから上記の「●5」で、「♪だれかさんの後ろに蛇がいる」と囃(はや)されることになります。この遊びでは、囃(はや)されるたびに「わたし?」「違うよ。」「ああよかった!」という問答が二度繰り返され、三度目に「わたし?」「そう!」で、「●6」の鬼ごっこが始まります。そこにはクライマックスにむけて緊張を高めていく効果とともに、オニとコドモとの距離を物理的にも心理的にもとっていく工夫があります。

現代のボードゲームにもそうした印象を与えるものがあります。例えば、下の画像の「ミッドナイトパーティーなどは、単なるサイコロ遊びを越えた独特の興奮とスリルをもたらしますが、それはこうした心の深層の民俗学的感覚を呼び覚ますからかも知れませんね。 <終わり>

ゲーム「ミッドナイトパーティー」jplogo2

(◆“ミッドナイトパーティ.” メビウス ゲームズ: http://www.mobius-games.co.jp/Amigo/Mitternachtsparty.htm )

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《解 説》

草場純氏は、双六の前近代史研究などで知られるゲーム研究者です。
本文は、草場氏が以前にNPO法人世界のボードゲームを広める会「ゆうもあ」の機関誌『ゆうもりすと』に掲載した記事の転載です。

なお草場氏はtwitter上で、三宅陽一郎氏(デジタルゲーム学会・理事)と共に「ゲームデザイン討論会」を開催しております。
第一回目の記録: http://t.co/13dMZ4mlST
第五回目の記録: http://togetter.com/li/682287
ゲームデザイン討論会」のハッシュタグ:#game_dsgn。

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【むりやり関連書籍】

TVアニメ「ノラガミ」公式サイト
「ノラガミ」 http://noragami-anime.net/

 

「18 大祓(おおはらえ)」. 神社本庁 | コラム:
http://www.jinjahoncho.or.jp/column/000043.html

 

網野善彦『中世の非人と遊女』
『中世の非人と遊女』
http://www.amazon.co.jp/dp/4061596942/ref=pd_sim_b_2?ie=UTF8&refRID=1CH2WQ0VDXZTX6WQMD3B

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