《遊戯史学会2015年05月23日》

突然ですが遊戯史学会の活動ご案内です
今回は、増川宏一先生と江橋崇先生(法政大名誉教授)のダブル講演あります

 蔵原大(遊戯史学会理事)
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■ 日時:2015年5月23日土曜日1330時~1630時
■ 会場:東京富士大学本館142教室
■ アクセス:山手線・西武新宿線・地下鉄東西線 高田馬場駅北口(早稲田口)下車、
 さかえ通りを北西へ3分歩いた橋の向こう正面(橋は渡らない)。

■ 参加費:500円(予約不要です)
■ 内容:
 講演1 「絵双六と広告、宣伝」 増川宏一会長
 講演2 「消えた『ことば遊びカルタ』の謎」 江橋崇副会長
※18時ごろに大学近くで有志の懇親会あるかもしれません

《遊びにひそむ民俗 3》

《遊びにひそむ民俗 3》

●本文:草場純(遊戯史学会・理事)、解説:蔵原大(遊戯史学会・理事)

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《本 文》

 日本(とは限らないが)の民俗の中には、いろいろなところに「形式化された問答」というのがある。

 昔話の中では山姥(やまんば)とお札(ふだ)が問答をしたり、犬・猿・雉も黍団子(きびだんご)による利益誘導もさることながら、桃太郎との問答によってお供となっていくと考えるべきだろう。ヤマトタケルに至っては、ことあげによって命を落とす。そう言えば「人狼(じんろう)」は、問答によって命を落とすゲームとも言える。

 伝承遊びに注目すれば民俗的な問答は更に顕著で、今まで紹介した「今年の牡丹(ぼたん)」でも、「あぶくたった」でも、オニとコドモの問答は、遊びの主要な部分を占めている。よく知られる「花一匁(はないちもんめ)」も「問い」と「答え」の繰り返しによる、文字通りの問答が遊びの本体であり、民俗の透けて見える部分でもある。


( https://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=l2Bgxl06NX4 )

  問 ♪ふるさとまとめて花一匁 答 ♪ふるさとまとめて花一匁
  問 ♪となりのおばさんちょっと来ておくれ 答 ♪鬼がこわくて行かれない
  問 ♪おふとんかぶってちょっと来ておくれ 答 ♪おふとん破れて行かれない
  問 ♪お釜かぶってちょっと来ておくれ 答 ♪お釜底抜け行かれない
  問 ♪鉄砲かついでちょっと来ておくれ 答 ♪鉄砲弾なし行かれない
  問 ♪それはよかよか どの子が欲しい 答 ♪あの子が欲しい
  問 ♪あのこじゃ分からん 答 ♪この子が欲しい
  問 ♪このこじゃ分からん 答 ♪相談しよう
  問 ♪そうしよう

 それぞれに隠喩されているものの詮索は民俗学に譲り、ここでは遊びからゲームに発展した「問答」を見てみよう。

「なぞなぞ」などの言葉遊びは、ゲームと言うよりはクイズだが、明治から大正期に流行った字花(チーハー)は、それなりにゲーム性が高い。これは親が予め定められた漢熟語の中の一つを正答と指定し、曖昧なヒントを出して回答を募るギャンブルゲームである。こうした「親の決めた正答を子が察して当てる」というゲームシステムは、手本引きなどにも見られるものである。とは言えもちろん日本の専売と言うわけではない。現代では、たほいや(ディクショナリー)や、アップルトゥアップルなどとして多用されている。絵が絡めば、ディクシットやカレイドス、アイデンティクやテレステレーションなどもこの類といえるかもしれない。

  とは言え、例えば「ディクシット」と「手本引き」を比較したとき、その文化的な背景の大きな違いに、深い考えを覚えずにはいられない。これを民俗の違いに結びつけるのは、牽強付会に過ぎるだろうか。

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《解 説》

草場純氏は、双六の前近代史研究などで知られるゲーム研究者です。
本文は、草場氏が以前にNPO法人世界のボードゲームを広める会「ゆうもあ」の機関誌『ゆうもりすと』に掲載した記事の転載です。

なお草場氏は、三宅陽一郎氏(デジタルゲーム学会・理事)と共に「ゲームデザイン討論会」を開催しております。2015年3月には、神保町にある「奥野かるた店」で公開討論会のパネリストを務められました。

【ゲームデザイン討論会―公開ディスカッション2015.03.14】
遠藤雅伸も登場。アナログゲームとデジタルゲームの歴史的邂逅レポ(エキサイトレビュー、小野憲史)
「ゲームデザイン討論会」のハッシュタグ:#game_dsgn。


( https://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=fG-l8z3bIkQ )

《ゲームデザイン討論会3/14―公開ディスカッション》

遊戯史学会と日本デジタルゲーム学会は、3月14日、ゲームデザインの過去・現在・未来をトコトン探求する公開討論会を行います。題して「ゲームデザイン討論会―公開ディスカッション」。

これまでツイッターで行われてきたゲームデザイン討論会ですが、今回はリアル・ワールドで対面しながらのトークバトルです。

●日時:03/14(土曜)13:30~16:00
●場所:東京・神保町の奥野かるた店 2F( http://www.okunokaruta.com/)
参加は予約制で定員40名(参加費1500円, 詳しくはhttp://www.gameshistory.net )DSC_0110

トークのテーマは「奥野の百年、ゲームデザインの千年」。奥野かるた店の約100年の歴史を振り返りながら、デジタルゲームとアナログゲームの双方の知見からゲームデザインを幅広く語り合います。もちろん参加者からの飛び入り発言、大歓迎!

パネリストは、デジタルゲーム界から『ゼビウス』『ドルアーガの塔』の開発者として知られる遠藤雅伸氏、それにAI研究者の三宅陽一郎氏。アナログゲームからは「ゲームマーケット大賞」委員長で当AGS顧問の草場純氏、ゲーム紹介サイト“Table Games in The World”の小野卓也氏、ゲーム店「ドロッセルマイヤーズ」の渡辺範明氏が参加します。司会は遊戯史学会理事で当AGS会員の蔵原大。

参加申し込みは遊戯史学会サイトから( http://www.gameshistory.net )
申込者が定員を上回る場合、抽選となりますので、ご注意を!

【草場純先生のゲーム会】

【草場純先生のゲーム会】
草場純・蔵原大

AGS顧問の草場先生が主宰するゲーム会のリストです。
他にも多々ありますが、近々で行われるものだけピックアップしました。
予約不要なので、皆さま飛び入りでどうぞ!

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●日時:1月31日(土)19~21時半
●場所:高田馬場ブリッジセンター
(http://www.jcbl.or.jp/home/store_club/takadanobaba/tabid/90/Default.aspx)
●参加費:400円
●ゲーム内容:トランプのブラックレディ
(http://www.gamefarm.jp/modules/gamerule/page.php?game=blacklady.html)
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●日時:2月2日(月)19~22時
●場所:新宿にある「ゲームスペース柏木」
(http://www.gamerent.net/accessmap.php?d=20150122)
●参加費:1000円
●ゲーム内容:将棋のコマを使った「ごいた」
(http://www.kanda-zatsugaku.com/070921/0921.html)
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●日時:2月4日(水)19~22時
●場所:高田馬場ブリッジセンター
(http://www.jcbl.or.jp/home/store_club/takadanobaba/tabid/90/Default.aspx)
●参加費:400円
●ゲーム内容:チェッカーの亜種「ドラフツ」
(http://www.wmsg-teamjapan.jp/idx_checkers.htm)
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●日時:2月6日(金)19~24時
●場所:高田馬場ブリッジセンター
(http://www.jcbl.or.jp/home/store_club/takadanobaba/tabid/90/Default.aspx)
●参加費:400円
●ゲーム内容:トランプの「ブリッジ」
(http://www.jcbl.or.jp/home/introduction/what/tabid/156/Default.aspx)
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●日時:2月7日土13~17時
●場所:高田馬場の日本点字図書館
(http://www.nittento.or.jp/map/index.html)
●参加費:0円
●ゲーム内容:百人一首等
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●日時:2月7日土19~21時半
●場所:高田馬場ブリッジセンター
(http://www.jcbl.or.jp/home/store_club/takadanobaba/tabid/90/Default.aspx)
●参加費:400円
●ゲーム内容:トランプ
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遊戯史学会の新サイト&無料ゲーム会

《遊戯史学会の新サイト&無料ゲーム会》
 [蔵原大・遊戯史学会広報担当理事]

遊戯史学会はこのたびサイトをリニューアルしました。
今後ともよろしくお願いいたします。

■ 遊戯史学会新サイト:http://www.gameshistory.net/

さて11月22日の例会(1330~1620時)では、高田馬場にある東京富士大学キャンパスで開かれます
「五目並べ」とカードゲームの歴史に関する研究発表(&プレイ会)が行われる予定

■ 詳細は東京富士大学サイト(下写真)で公開中:http://www.fuji.ac.jp/app-def/S-102/wp/?p=7153
tokyofujiu

なお今回の例会では、二つの特別イベントが開催予定です。
■ ①.神保町の「奥野かるた店」から特別ブース出張
■ ②.ゲームプレイ用の特別ワークショップ(参加費無料、先着10名)

①は、神保町のゲームショップ「奥野かるた店」から、同店の会長とスタッフが出向されて、最新アナログゲームの即売会が予定されています。

②は、例会(1330~1620時)の後、発表で紹介されたゲームを実プレイする特別ワークショップが開かれる予定です。
参加費無料。先着順で10名。ゲーム他の資材は、すべて学会でご用意します。

お問い合わせについては、下記学会サイトからお願いします。

■ 遊戯史学会:http://www.gameshistory.net/

例会の会場である東京富士大学は、高田馬場駅から徒歩5分のところです。
駅の早稲田改札口から「さかえ」通り(下写真)をぬけてすぐそこ。
どうぞお気軽にお越しください。
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《遊びにひそむ民俗 2》

《遊びにひそむ民俗 2》

●本文:草場純(遊戯史学会・理事)、解説ほか:蔵原大(遊戯史学会・理事)

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《本 文》

「今年の牡丹(ぼたん)」は、前回に挙げた「あぶくたった」よりもっと忘れられた、既に失われたと言ってもそう間違いでない遊びです。ただ失われるのがあまりにも惜しい遊びでもあります。

〔◆ 解説者注:下の『こどものうた140選』(ドレミ楽譜出版社、1992)に「今年のぼたん」が収録: http://www.gakufu.ne.jp/detail/view.php?id=6081 〕

『こどものうた140選』
『こどものうた140選』(1992)

「今年の牡丹(ぼたん)」の全体は、以下の六つに分かれています。

 ●1.コドモ達が輪になって遊ぶ
 ●2.オニが現れて問答をする
 ●3.オニを含めてコドモ達が輪になって遊ぶ
 ●4.オニが「帰る」と言って再び問答になる
 ●5.オニをコドモが囃(はや)す
 ●6.鬼ごっこになる

案外複雑な構造をしているのですが、要するに鬼ごっこであるわけです。しかし民俗と重なるのはその前遊びに当たる部分なのです。

上で書きました「●1」「●3」の輪になって回る部分ですが、「♪今年の牡丹(ぼたん)はよい牡丹(ぼたん)、お耳をからげてスッポンポン、もひとつからげてスッポンポン」で耳をからげるのは、蛇よけ、とも魔よけとも言われます。オニはそれで理由を作って帰るのです。

そもそも鬼ごっこは、民俗学に言う感染呪術の雰囲気があります。オニは、悪霊であり、「穢(ケガレ)」であるわけです。その穢(ケガレ)は、接触によって憑依(ひょうい)感染します。オニに触られたコドモがオニになり、オニは穢(ケガレ)を染(うつ)すことによって、コドモに戻るわけですね。こうした穢(ケガレ)は、観念上のもののはずですが、子ども達の遊びの中でも、民俗のなかでも共同観念として実在化するのです。

〔◆ 解説者注:余談ですが「ケガレ」の意味をくわしく知りたい方には…… ⇒ 宮本要太郎「「ケガレ」の意味に関する比較宗教学的考察」(2008)http://kuir.jm.kansai-u.ac.jp/dspace/handle/10112/1334

実は、「今年の牡丹(ぼたん)」の中では明確に表明はされませんが、オニは蛇の精であるのです。穢(ケガレ)は蛇精として形象化されます。その証拠に姿は人間に見えても、影を見たり、後ろから見たら蛇そのものなのです。

だから上記の「●5」で、「♪だれかさんの後ろに蛇がいる」と囃(はや)されることになります。この遊びでは、囃(はや)されるたびに「わたし?」「違うよ。」「ああよかった!」という問答が二度繰り返され、三度目に「わたし?」「そう!」で、「●6」の鬼ごっこが始まります。そこにはクライマックスにむけて緊張を高めていく効果とともに、オニとコドモとの距離を物理的にも心理的にもとっていく工夫があります。

現代のボードゲームにもそうした印象を与えるものがあります。例えば、下の画像の「ミッドナイトパーティーなどは、単なるサイコロ遊びを越えた独特の興奮とスリルをもたらしますが、それはこうした心の深層の民俗学的感覚を呼び覚ますからかも知れませんね。 <終わり>

ゲーム「ミッドナイトパーティー」jplogo2

(◆“ミッドナイトパーティ.” メビウス ゲームズ: http://www.mobius-games.co.jp/Amigo/Mitternachtsparty.htm )

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《解 説》

草場純氏は、双六の前近代史研究などで知られるゲーム研究者です。
本文は、草場氏が以前にNPO法人世界のボードゲームを広める会「ゆうもあ」の機関誌『ゆうもりすと』に掲載した記事の転載です。

なお草場氏はtwitter上で、三宅陽一郎氏(デジタルゲーム学会・理事)と共に「ゲームデザイン討論会」を開催しております。
第一回目の記録: http://t.co/13dMZ4mlST
第五回目の記録: http://togetter.com/li/682287
ゲームデザイン討論会」のハッシュタグ:#game_dsgn。

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【むりやり関連書籍】

TVアニメ「ノラガミ」公式サイト
「ノラガミ」 http://noragami-anime.net/

 

「18 大祓(おおはらえ)」. 神社本庁 | コラム:
http://www.jinjahoncho.or.jp/column/000043.html

 

網野善彦『中世の非人と遊女』
『中世の非人と遊女』
http://www.amazon.co.jp/dp/4061596942/ref=pd_sim_b_2?ie=UTF8&refRID=1CH2WQ0VDXZTX6WQMD3B

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遊びに潜む民俗 1

《遊びに潜む民俗 1》

●本文:草場純(遊戯史学会・理事)、解説ほか:蔵原大
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《本 文》

◆◆♪あぶくたった 煮え立った 煮えたかどうだか 食べてみよ ムシャムシャムシャ◆◆※注

( https://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=Nfv3cY8VnLY )

野外の童(わらべ)遊びが滅んでいく中、まだ残っているのが、この「あぶくたった」とあとは「花一匁(はないちもんめ)」「初めの一歩」ぐらいでしょうか。ところでこの「あぶく」は何のあぶくなのでしょうか。何が煮え立ったのでしょうか。もう少し遊びを追ってみましょう。

あぶくたった」では、コドモ達は輪になって一人のオニを取り囲みます。オニはしゃがまされ、ムシャムシャムシャのときに つつかれたりします。ですから、煮えるのはオニなのですが、果たして鬼が煮えるものなのでしょうか。そうでないなら、オニ とは一体何でしょうか?

この後、二度同じことを繰り返し、三度目に「もう煮えた」と言われ、オニは別の場所に移されます。そこはコドモ達によって「戸棚」とされます。

◆◆♪トダナに仕舞って、鍵かけて、ご飯を食べて、お布団敷いて、電気を消して、もう寝ましょう◆◆※注

コドモたちが寝てしまうと、オニが「トントントン」と言います。コドモ達が「何の音?」と聞くと「風の音」などとオニが答え、コドモ達は「ああよかった。」と応じます。そして三回目(とは限らないが)にオニが「お化けの音」と答えて、コドモ達は逃げ、ここから鬼ごっこが始まり、掴(つか)まった子が次の鬼になるわけです。

煮られ、食べられ、戸棚に仕舞われ、お化けになるモノって何でしょう。実はこれは「小豆(あずき)の精」なのです

古代の社会には、イモ文化圏、マメ文化圏、イネ文化圏、ムギ文化圏、コーリャン文化圏などがあり、それらは重層しつつ基本的には産業革命まで続いたとされます。「あぶくたった」は、そうした日本文化の古層にまで辿れる遊びだと思われます。

いや逆に、産業革命以後の近代文化に覆われたイネ文化の、そのまた下に隠されたイモ・マメ文化だからこそ、遊びの中にようやく命脈を保ってきたとも考えられます。

それは丁度ヨーロッパで、万聖夜(ハローウィン)の夜にジャック・オ・ランタンを先頭に飛び出してきて翌日の万聖節には上層のキリスト教に覆われて再び地下へ消えていく、キリスト教以前の精霊たちのようです。

すなわち子ども達は、遊びの中に文化の古層を学ぶのだとも考えられるのです。<終わり>

※解説者注:皆さんご存知のように、いわゆる民謡とは、役所や企業から押し付けられた既製品ではなく、各地の人々が個別に工夫した風習・口伝です。民謡には時代・地域ごとに多彩なバリエーションがあります。ですから皆さんがお聞き及びの「あぶくたった」と本文のそれとが若干異なることはご了承ください。

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《解 説》

草場純氏は、双六の前近代史研究などで知られるゲーム研究者です。
本文は、草場氏が以前にNPO法人世界のボードゲームを広める会「ゆうもあ」の機関誌『ゆうもりすと』に掲載した記事の転載です。

なお草場氏はtwitter上で、三宅陽一郎氏(デジタルゲーム学会・理事)と共に「ゲームデザイン討論会」を開催しております。
第一回目の記録 http://t.co/13dMZ4mlST
第五回目の記録 http://togetter.com/li/682287

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【むりやり関連書籍】

●草場純ほか『ゲーム探検隊』
51pNXY6Vh3L._SY450_
http://www.amazon.co.jp/dp/4903746011

●柳田 國男『明治大正史 世相篇 新装版』
http://bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=1590820

●二宮宏之『深層のヨーロッパ』 (民族の世界史シリーズ)
http://www.amazon.co.jp/dp/4634440903

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5/31 遊戯史学会のご案内

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<5/31 遊戯史学会のご案内>
 草場純(遊戯史学会理事・当AGS顧問) 解説・記事編集:蔵原大

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【解 説】 蔵原大
 ゲームの歴史を研究する遊戯史学会の総会が、5月に東京で開かれる予定です。ご聴講される際の予約は不要ですので、お気軽においでください。下記「本文」を書かれた学会理事の草場純先生は、これまで『ゲーム探検隊』などを執筆される他、最近ではTwitter上で「ゲームデザイン討論会」を催されています(AI研究者の三宅陽一郎先生と連名)
 
 なお遊戯史学会における研究の方向性につきましては、学会会長が書かれた「増川宏一語る「研究の切り口」」をご参照ください( http://analoggamestudies.com/?p=199 )

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【本 文】 草場純

 2014年5月31日土曜日東京都世田谷区太子堂2-16-7 世田谷産業プラザ大会議室にて遊戯史学会第27回総会が開かれます場所は東急田園都市線三軒茶屋北口下車徒歩2分 のところですので、どうぞおいでください。資料代500円です。(遊戯史学会員は無料) 時間は14時~17時で、その後懇親会も計画されています。

●<参 考> 世田谷産業プラザ:
https://www.setagaya.co.jp/institution/51_setagayasangyou.html

 さて、内容ですが、恒例により今回も講演が二つです。

講演1 「『厩図屏風』の中の盤上遊戯」       田中規之氏
講演2 「長崎奉行所犯科帳にみるカルタ賭博の実態」  江橋崇氏

講演1について
 田中規之(たなか・のりゆき)氏は長く遊戯史学会監事を務められ、特に文献資料の少ない古代のゲームについて、さまざまな資料を紹介されてきました。今回の「厩図屏風」(うまやず・びょうぶ)は、文字通り屏風に厩(うまや)の絵を描いたものです。初期のそれは専ら厩(うまや)につながれた何頭かの馬を描くだけものでしたが、時代が降るに従い、半ば社交場と化してきた厩(うまや)の周りで、将棋や双六を遊ぶ様子がリアルに描かれたものが現れます。特に重要文化財ともなっている16世紀頃の成立とされるものは、ゲームの局面もかなり辿れます。今回はおそらくそこに着目した発表になるのではないかと、期待されます。

●<参 考> 繋馬図屏風(厩図屏風):
C0005738
【重要文化財。16世紀頃の作。画像提供:東京国立博物館 http://www.tnm.jp/
(画像の無償利用の範囲と条件について:http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1372

●<参 考> 「厩図屏風」(うまやず・びょうぶ)は切手にもなっています。
0040040009872
http://www.kennedystamp.jp/shopdetail/004004000987/004/X/page3/product/

講演2について
 江橋崇(えばし・たかし)氏は法政大学の憲法学の教授でしたが、昨年度定年退職され、これからは「本業」のカルタ研究に打ち込むと話されていましたので、特に今回の発表は楽しみです。氏は、日本のカルタ研究の第一人者で、「遊戯史研究」誌には、かつて三回にわたって花札の歴史も執筆されていました。遊戯史では資料の不足がいつもネックになりますが、特に当事者が記録を残さない賭博の領域では、決定的に資料が不足しています。というわけで、正確で詳細な記録は、むしろそれを取り調べた司法側に遺されていることが多いのです。今回もそうしたアプローチだと思われますので、一層期待が高まります。

●<参 考> 江橋崇―Wikipedia:
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%9F%E6%A9%8B%E5%B4%87

●<参 考> 「ナガジン」発見!長崎の歩き方:「犯科帳が教える江戸期の長崎」:
title1012
http://www.city.nagasaki.lg.jp/nagazine/hakken1012/index.html

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増川宏一語る「研究の切り口」―その〔3〕(全3部)

増川宏一語る「研究の切り口」―その〔3〕(全3部)
(本文:増川宏一、解説・レビュー:蔵原大、協力:草場純、仲知喜)

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■【解 説】
  蔵原 大

 増川宏一といえば、ゲーム研究にとって「大先輩」にあたる、遊戯史研究の分野でご活躍されてきた高名な研究者です。将棋や賭博(ギャンブル)の盛衰に関する増川先生の史学研究について、ご存知の方も多いでしょう。

■ 遊戯史学会:http://www.gameshistory.net/

 先日、幸運にも増川先生とご縁ができましたので、当AGSの草場純顧問を介して、遊戯史や歴史研究における「研究の切り口はどのように見つけたらよいのか」をお聞きしました。遊戯史(あるいは歴史学やゲーム研究)はどんなポイントから研究してゆく学問なのか、ということをお訊ねしたわけです。

 以下の【本文】は、増川先生のご承認を得て、先生よりいただいたお手紙を転載したものです。長くなりますので、今回は三分割したうちの最後の部分「その〔3〕」を公開しました。

●その1( http://analoggamestudies.com/?p=199 )
●その2( http://analoggamestudies.com/?p=359 )

はすでに公開中です。

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■【本 文―その〔3〕】
  増川宏一

(その〔2〕 からの続きです)

 資料を探すのも大事な研究の一環です。信頼できる第一級の資料に辿りつくことは立派な研究活動です。

 よい資料を入手したら、それをどう読み解くか、自分の力量が試される問題です。大切な箇所に気がつかなかったり、見落とさないように鍛錬しておくことが必要です。これが無いと「猫に小判」で、たぶん私はいつも見過ごしているのではないかと思っています。

 遊戯史研究は、従来の史資料を遊戯史の観点から再検討することです。例えば『中世法例史資料』のなかに大和薬師寺の「薬師寺博奕制禁評定記録」(永禄一一年・一五六八年・三・二)の評定で「博奕徳政」のことが述べられています。この数年前も寺領内の博奕倍増とあるのですが、ついに博奕徳政をせざるをえないようになっています。賭博で負けた借財を全部チャラにする、という意味でしょうが、日本の遊戯史上、このような珍しいことがあったのにこれ迄、どなたも言及されませんでした。それで『(仮題)日本遊戯思想史』で述べることにしました。

 記録類の内容を積語しなければならない一例です。

解説コメント:この「博奕」とは「バクチ」ことギャンブル行為。なお「永禄一一年」とは、「桶狭間の戦い」が永禄三年(一五六〇年)、イギリスの劇作家シェイクスピアの生誕が永禄七年(一五六四年)に相当〕

 以上が先日の御手紙の返事です。御満足いただけなかったように思いますし、参考にならなかったと思います。

 研究の苦労や失敗談は幾つかありますが、これこそ参考にならないので省略しました。

 私は「遊び」を人間の生活のなかで正当に位置づけたいと思い、そのためには不当な評価や蔑視、無視を正そうと常々思っています。

 粗雑な返事になりましたが御容赦ください。

[追伸]
 私は次作『(仮題)日本遊戯思想史』の下書きのため毎日忙しくしております。昨日は長時間図書館で戦前戦中の「少年倶楽部」の少年小説を読み耽りました。とても懐しく、完全にタイムスリップした一日でした。少年に与えた軍国思想も「切り口」のひとつでしたので。

[二伸]
 切り口というのは一定の視点から述べることで、追伸のところは、「少年に与えた軍国主義、軍国思想」は、誰がどのようにして与えたのかを告発したい、という意図からです。あの時、手紙に書いたと思いますが、太平洋戦争が始まってまもなく、ミッドウェー海戦で日本海軍は大敗北で、戦死者三,〇五七名でした。この戦死者のうち、一四歳で海軍に志願した者八名、一五歳で志願した者三九名、一六歳で志願の者一五八名、一七歳で海軍に志願して戦死した者二六一名です。戦争が前途有為の青少年を殺したことに憤りといたましい気持ですが、それとは別に、一四歳、一五歳は親の反対を押し切ってか、親に隠して志願したのでしょう。その子供達は、つい先刻まで米英撃滅カルタで遊び、征け少年よ、という絵双六で遊び、少年倶楽部の軍事冒険小説で米英と闘うことを教え込まれ、海軍に志願して戦死したのです。

ミッドウェー海戦

 私は玩具や少年物語物が戦死へ誘う用具に転化した、本来楽しむべき遊戯具が、たとえ一時的にしろ、限られた社会状況にせよ、本来と異なる役割を果した、と知り、遊戯史研究の視野が開けたように思いました。これも『日本遊戯思想史』に記しましたが、どの立場からモノを見るか、が「切り口」の最も大切なことと思います。

(おわり)

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■【レビュー:増川宏一『将棋の歴史』】
  蔵原 大
将棋の歴史

 なお読者の中には増川先生の業績に不案内な方もおられるかもと思い、ここに先生のご著書のレビューを付け加えました。理解の一助にしてくだされば、幸いです。

 ところで増川宏一先生の名前を世に知らしめているものは、やはり先生の将棋史にかんする研究の成果でしょう。そのまとめにあたるのが、平凡社から出された『将棋の歴史』です。

http://www.amazon.co.jp/dp/4582856705

 よく将棋は、日本の伝統文芸のひとつとして引き合いに出されます。棋士たちの活躍やコメントが週刊誌に載ることだって、そう珍しくありません。にもかかわらず意外にも、将棋に関する歴史は、研究者が少ないせいか、今でも誤解されていたり、よくわからない点が少なくないのです。

 例えば……

 ▼日本の将棋は、中国の由来か、東南アジアから来たのか?
 ▼昔の「大将棋」「中将棋」は、実際にプレイされていたのか?
 ▼江戸時代、将棋指しは幕府から優遇されていた、というのは本当か?
 ▼明治から今まで、将棋とマスコミはどう寄り添ってきたか?

などなど、案外に知られていない諸々の事柄について、増川『将棋の歴史』は丁寧に解説してくれます。

 こうした将棋に関する歴史をひも解いていくと、いわゆる「伝統」「日本文化」が、外国の影響を受けていたり、思いがけない方向にチェンジしたり等、単なる古めかしさとは一線を画することが分かってきます。

 それというのも「伝統」とは、太古からの既定路線ではなく、昔の人・今の人・外国の人・この国の人々が作り出していく合作だからなのでしょう。将棋を通じて、改めて日本のモノづくり文化、クールジャパンを考え直すというのも面白いかもしれませんね。

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■【むりやり関連書籍】

● 山田芳裕『へうげもの』(漫画)
へうげもの
( http://www.moae.jp/comic/hyougemono )

 もともと茶の湯は、将棋と同じく、海外から伝来したポップな食文化の一つでした。茶の道に半生をかけた稀代のオタクこと古田織部のケシカラン生涯を追いかけるクールなマンガ!
 カッコイイって、こういうヤツだね。

● 東島誠『自由にしてケシカラン人々の世紀』
自由にしてケシカラン人々の世紀
( http://book.akahoshitakuya.com/b/4062584670 )

 中世の将棋は、もともと公家・僧侶といったセレブ限定の遊びだったと考えられています。コマを漢字で見分ける将棋、あるいは短歌のような文字遊びは、読み書きができない庶民には閉ざされていました。

 それが戦乱の南北朝時代になると、社会の表舞台に「悪党」「異類異形」なるパンクなベンチャー人が出没し、「江湖」という開かれた実力主義が駆けぬけ、公序良俗をかき乱しつつ、将棋を始めとする諸々の文化を庶民へと解放していくのです。

 『自由にしてケシカラン人々の世紀』は、アニメ『もののけ姫』、後醍醐天皇や楠木正成に象徴される「異類異形」「異形の王権」の生きざまをヴィヴィッドに描きつつ、世の中の混乱から生まれる歴史のイフこと「可能態」を足がかりにアキハバラの今、現代世界の変革まで見すえた野心作です!

「第10回中将棋全国大会」のご案内

「第10回中将棋全国大会」のご案内

蔵原大

 将棋はあまりにポピュラーな遊び(ゲーム)ですが、いまの将棋のスタイルは実は江戸時代になって固まったものです。それ以前の将棋となると、お目にかかる機会はめったにないでしょう……。

 と思いきや。


wikipedia「中将棋」から引用

 いまでもチャンとプレイされていました。かつて「中将棋」と呼ばれた、盤はデカいし駒数は多い幻の将棋。なんと今年1/12(日曜)に各地のファンが大阪市に集結して、関西の将棋会館(あの日本将棋連盟の運営です)で一大プレイを敢行せんというのです。その名も「第10回中将棋全国大会」

http://www.chushogi-renmei.com/topics/topics.cgi

 そもそも「中将棋」って何ですか? というご質問には、例によってWikipedia先生が助けになります。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%B0%86%E6%A3%8B

 ちなみに来る1/12の大会では「親睦戦」として初心者プレイが可能となっており、これは一見の価値あります。

 じつは蔵原も、今回の大会を主催される「日本中将棋連盟」のメンバーのご好意により、中将棋のプレイを拝見したことがあります。

 駒数がとにかく多いから、指しつ指されつ日が暮れるだろう……という先入観とは裏腹に、とにかくテンポが早い早い(上記連盟では指し手に制限時間を設けているのです)。通常の将棋とちがって、威力の大きなコマが目白押しですから、序盤から派手な殴り合いになります。初手から二時間ほどでコマの半分が消し飛んでいました(持ち駒制不採用のルールです)。

 こんなモンスター将棋にご興味ある方は、ぜひ大阪の「第10回中将棋全国大会」をのぞいてみてはいかがですか?

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「第10回中将棋全国大会」
■開催日:2014年01月12日(日曜)
■09:30~午後
■会場:関西将棋会館4F 多目的ルーム
JR環状線福島駅徒歩3分、JR線新福島駅・阪神福島駅徒歩5分
http://www.kansai-shogi.com/access.html
関西将棋会館アクセス

■主催:日本中将棋連盟
http://www.chushogi-renmei.com/

■参加費:男性大人2,000円、女性および中学生以下1,000円
(※飛び入り参加可能なようですが、できれば事前申し込みがありがたいです、とのことです)
http://www.chushogi-renmei.com/topics/topics.cgi

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